2009年度
[冷戦史 WS]
第2回冷戦史WS「多元的視角からアジア冷戦を考える」国際ワークショップ
【日時】2010年3月16日
【場所】中国上海・華東師範大学中山北路キャンパス逸夫楼 共催:華東師範大学冷戦国際史研究センター、NIHU現代中国地域研究早稲田拠点
【概要】NIHU 現代中国地域研究早稲田拠点の外交(史)班は華東師範大学冷戦国際史研究センターと、2008年3月17-18日に1回目の「アジア冷戦史」ワークショップを開催した。2回目となる今回の国際ワークショップは、開催場所を上海に移し、日本側から7名の参加者が派遣された。本ワークショップは、5セッションを設け、報告者・ 発言者が合計19名、討論者が9名参加した。また第4、5セッションの間に、華東師範大学による、毛里和子教授(早稲田拠点代表)への顧問教授の授与式が行われた。具体的には以下のプログラムで開催され、非常に充実した一日となった。50名ほど参加した。
プログラム
8:30—9:00
司会 沈志華(華東師範大学冷戦国際史研究センター主任、教授)
開会挨拶 張済順(華東師範大学校務委員会主任)
開会挨拶 毛里和子(早稲田大学現代中国研究所所長)
9:00—10:20:第一セッション
座長:増田弘(東洋英和女学院大学教授)
報告者及び報告タイトル:
・毛里和子(「毛沢東時期の中国外交を論ずる:中ソ同盟を例として」)
・沈志華(「強いられる同盟――スダーリンと中国共産党政権の成立と増強」)
・松村史紀(大阪国際大学講師、「戦後秩序の中の中ソ同盟(1945 年)」)
・牛軍(北京大学教授、「冷戦期中国外交の経緯」)
討論者:山本武彦(早稲田大学教授)、楊奎松(華東師範大学教授)
10:30—11:50:第二セッション
座長:徐思彦(社会科学文献出版社編集者)
報告者及び報告タイトル:
・張紹鐸(上海外国語大学副教授、「雲南・ミャンマ辺境における国民党軍残部の活動と第一次台湾へ撤退の始末」)
・楊奎松(「新中国政府が米国文化の影響を排除するプロセス」)
・李丹慧(華東師範大学教授、「1950-70 年代の中越関係に関する幾つかの問題」)
・戴超武(華東師範大学教授、「中共中央の”マクマホンライン”に対する認識と中国の中印境界問題の処理(1951-1962 年)」)
討論者:毛里和子、牛軍
14:00—15:20:第三セッション
座長:青山瑠妙(早稲田大学教授)
報告者及び報告タイトル:
・増田弘(同前、「1950 年代における日中国交正常化の可能性――石橋湛山を中心に」)
・国吉知樹(早稲田大学准教授、「吉田茂の対中国政策構想と日英関係」)
・崔丕(華東師範大学教授、「冷戦転換期の日米関係――東芝事件への歴史的考察」)
・徐顕芬(早稲田大学客員講師、「アジア冷戦転換期における日中関係の調整――中国の日本から政府借款の 入を事例として」)
討論者:山本武彦、余偉民(華東師範大学教授)
15:30—17:00:第四セッション
座長:李丹慧(華東師範大学教授)
報告者及び報告タイトル:
・趙学功(南開大学教授、「米国、台湾と朝鮮戦争」)
・徐友珍(武漢大学教授、「無視された役――英国と朝鮮戦争の捕虜送還問題」)
・陳波(華東師範大学講師、「アイゼンハワー政府と米国の朝鮮南部における核配置」)
・周娜(華東師範大学講師、「米国の台湾海峡危機の政策決定過程におけるアイゼンハワーとダレスの地位と役割」)
・梁志(華東師範大学講師、「“青瓦台事件”、“プウェブロ”号危機と米韓関係」) 討論者:国吉知樹、石源華(復旦大学教授)
17:10—17:25
華東師範大学による、毛里和子教授への顧問教授の授与式
司会者:崔丕
発言者:張済順、毛里和子
17:30—18:30:第五セッション「アジア冷戦研究の展望」
座長:崔丕
自由討論
[研究会]
1. 第一回「外交(史)研究班」研究会
【日時】2009年6月9日
【場所】早稲田大学19号館710室
【報告者】趙全勝(Professor, American University )
【議題】日中関係と米国ファクター
【概要】報告者はまず、第二次世界大戦後の日中関係を、1949-72年の「政冷経冷」期、72-89年の「政熱経熱」期、89-2003年の「政冷経熱」期、03-06年の「政冷経冷」期に 区分し、06年以降の日中関係は「政熱経熱」になるのではないかと問題提起した。次に、日中関係におけるネガティブ・ファクターとして、歴史、台湾、領土、エネルギー競争、認識相異などを挙げ、ポジティブ・ファクターとして、経済的相互依存、北朝鮮問題、東アジア共同体、学生交換の増加、指導者の相互訪問などを挙げた。そして、日中関係における米国ファクターについて、ブッシュ政権の世界戦略の転換、アジア政策の優先課題(反テロ、北朝鮮核危機)、中国政策(関与か封じ込めか)などから議論した。最後に日中関係が岐路に立つことを指摘し、戦略的思考が重要であると指摘した。質疑応答では、1日本の対中ODAをどう認識するか、2日本は常に第一強国と同盟を組むのが本当か、3現在に日中関係に対してどう評 価するか、4六者協議についてどう見るべきか、などの質問がでた。アジア太平洋研究科の50名ほどの学生が参加した。
2. 第二回「外交(史)研究班」研究会
【日時】2009年7月20日
【場所】早稲田大学41-31号館2階第2会議室 報告者:牛軍(北京大学国際関係学院教授)
【議題】現代中国外交研究の新傾向――雑感
【概要】報告者はまず、21 世紀初め(前の5年間)の中国外交研究は、過去20年間の研究状況と比べても質と量の両方で大きな発展を成し遂げたと述べた。研究の視点について、学界が「中国の世界」と「世界の中国」というテーゼを双方向で議論し、特に「中国は世界の一部分」という一致した視角で研究し、「中国と世界とは密に不可分」とはどういう程度のものかを真剣し考え、中国社会が外部世界との相互連動のなかでどのように変化したかを探究する、などが重要と指摘した。次に、中国外交研究の成果を、「歴史と哲学の思考」、「戦略と政策」、そして「対 外政策」という3つのカテゴリに分類し、その特徴を分析した。中国内政と中国外交との関係に関する研究は中国外交研究において避けて通れない問題であること、「戦略」研究が多いことと対照的に「政策」研究が非常に少ないことが問題であること、大国関係研究が多いことと対照的にそれ以外(国際組織、NGO組織、発展途上国との関係など)の研究が非常に少ないこと、などを指摘した。最後に、理性的な態度をもって中国と外部世界との関係を対処するのが非常に重要 で、中華民族は理性を民族の魂に刻み込むべきだとの指摘が特に興味深い。報告者の指摘をめぐって活発な議論が行われた。本研究会には16名が参加した。
3. 第三回「外交(史)研究班」研究会
【日時】2010年2月2日
【場所】早稲田大学9号館917会議室 報告者:戴東陽(中国社会科学院近代史研究所副研究員)
【議題】晩清駐日使節団と近代日中関係
【概要】報告者は清末の駐日使節の任期にそって、各使節がそれぞれ直面した日中関係の問題をいかに対処していたかを時系列的に分析した。具体的には、1第一期何如璋使節団と日中関係の二大問題(琉球問題、条約改正問題)、2黎庶昌使節団と琉球問題、3徐承祖使節団と日中『天津条約』、4歴代駐日使節団と金玉均事件などについて述べた。報告者は先行研究の問題点、特に意見が分かれているポイントを指摘しながら、自身の観点を実証的に展開した。参加者からは、1台北の資料の利用、2日本側研究者の観点の整理、3使節の政治外交活動だけではなく、文化情報活動への注目、4琉球、朝鮮など対象側の資料の利用及び見解の整理、などが必要ではないかと指摘された。また自由討論では、1使節の任期にそった時系列的な分析を行ったが、それによって対日政策は変わったか、外交システムは変化したか、2使 節団と本国の総理衙門とはどういう関係にあるか、3使節団が外交政策決定においてどのような役割を果たしたかなどの問題について議論された。本研究会には15名が参加した。